以前の記事で、「サンタのキャラはコカコーラがつくったのではない」ということを指摘しました。サンタはコカコーラが作ったというのは、一種の怪しい都市伝説になっているみたいですね。
もちろん、真実ではないのですが、コカコーラのCMが、サンタのイメージを人々に植え付ける大きな働きをしたことは間違いありません。今回は、どうしてコカコーラとサンタの都市伝説が生まれたのかを記事にしました。
正直に言いますと、私(筆者)も以前はこの都市伝説をまともに信じていた人間なので、反省の意味を込めてお伝えしたいと思います。
目次
サンタはコカコーラが作ったという噂を徹底検証!
サンタクロースがコカコーラのCMから生まれたということはあり得ません。歴史的に見ても、サンタのモデルとなった聖ニコラウスは4世紀の人物で、彼が出現して以降、サンタの原型になるようなものがいくつもできています。
昔のサンタは背が高く痩せた男で、司教のようなローブと、北欧の猟師のような毛皮を身に着けていたようです。南北戦争後のアメリカでは、サンタのコートの色が、茶色から赤色に変わっていったそうです。
サンタの赤い服は、コカコーラのCMが起源という噂がありましたが、これも嘘なのですね。ただ、「サンタさんは赤い服」というイメージを強く植え付けたのはコカコーラのCMだとは言えるでしょう。
コカコーラ社は、1920年代にクリスマスシーズンの広告としてサンタクロースを取り上げ始めています。最初は今のサンタのイメージとは違っていました。1931年、画家ハッドン・サンドブロムが現代のサンタに通じるイメージを描き、それがコカコーラのCMに登場すると、瞬く間に世界に広がったようです。
ちなみにこちらは今から約16年前、日本中を感動させたコカコーラが送り出した、クリスマスのCMです。このCMで「コカコーラ=サンタクロース」が根付いたと言っても過言ではないでしょう。
▼2000年CM コカ・コーラ 「20世紀最後のメリークリスマス」
なぜサンタの由来がコカコーラという噂が広まったのか?
サンドブロムによって描かれたサンタは、1822年に発表されたクレメント・クラーク・ムーアの詩「聖ニコラスの訪問」からインスピレーションを得たものでした。詩の中の聖ニコラスは、ぽっちゃりとしていて愛嬌があり、陽気でフレンドリーな人でした。そして赤い服のイメージを持っていました。
サンドブロムは、1931年から1964年までの間に、コカコーラのためのサンタクロースを40点以上描いています。おそらく、コカコーラが世界的に愛される飲みものになっていったことで、サンタの広告も世界中に広まって行き、サンドブロムの描いたサンタ像が人々の間に定着していったのでしょう。
そうなる要因として、やはり大切なのはサンタのイメージですね。サンドブロムの素晴らしいところは、そのイメージを聖ニコラウスにちなんだ詩の中に求めたことでしょう。
サンタクロースの原点に帰って、イマジネーションを膨らませたことがすごいと思います。サンタの原点に訴えるようなイメージですから、「コカコーラがサンタの由来だ」という誤解が生まれたのかも知れません。
他にもあるぞ!サンタにまつわる噂3選!
サンタのモデルは友人の営業マン
サンドブロムが詩のイメージからサンタをつくり上げたと言っても、やはり、実際のモデルがいたようです。それは、彼自身の友人で、陽気で少々しわくちゃな顔つきのブレンティスでした。彼は定年を迎えた営業マンだったようで、プレンティスが亡くなってしまうと、サンドブロムは自分をモデルにしたようです。
スプライトボーイの登場
1961年にコカコーラが発売した、スプライトというレモンライム風味の炭酸飲料をご存知でしょうか? 実は、コカコーラは、1942年にスプライトボーイという少年をサンタと共に登場させたCMを作っています。
これもサンドブロムによる創作のようです。スプライトという名前は、Spirit(元気)と、Sprite(妖精)から来ているようです。おそらく、スプライトボーイからスプライトという飲物ができたのでしょう。
2001年にアニメ化された古いサンタさん
1962年にサンドブロムが描いたサンタが、2001年にコカコーラのCMでアニメ化されたそうです。このCMは、ロシアのアニメーション作家が制作したようですが、古さと新しさが混じったような雰囲気がとても良いアニメになっています。こちらの動画でご覧ください。
▼Alexandre Petrov: Coke – Santa Sundlblom
サンタクロースはコカコーラが由来の嘘 まとめ
いかがでしたでしょうか? 調べてみると、コカコーラがサンタのキャラをつくったのではないことは当然としても、コカコーラのCMが、サンタのイメージ拡散に大きな力を及ぼしていることが分かります。
これは、日本で言えば、古くからある「土用の丑はうなぎ」とか、「日本のバレンタインデーのお祭り騒ぎ」などと同様に、コマーシャリズムの力を改めて思い知らされる出来事ですね。
でも、そこには「商品を売る」目的以上に、制作者の人々(消費者)に対する思いやりがあることを忘れてはいけません。
コカコーラのサンタには、本当に人々を幸せにするふっくらした風体とにこやかな顔があります。サンドブロムが何を願ってサンタをつくったのかが分かりますね。