私(筆者)は、他の記事でも書いているように、この時期はボジョレーヌーボーの解禁が待ちどうしくて頭がいっぱいですが、ボジョレーヌーボーのキャッチコピーに注意を向けることはないので、その文句が気になることはありませんでした。
おそらく、「あるモノ」がネット上に出ることがなければ、世間で注目されることはなかったと思います。
その「あるモノ」とは……
ボジョレーのコピペ問題
そう、ボジョレーヌーボーの数十年分のキャッチコピーが一覧化され、表面化した「ボジョレーのコピペ問題」のことです。
これは一言でいうと、「毎年絶賛し過ぎるコピー表現を出し過ぎる」というものです。今回は、これのテーマに切り込んだ記事をお送りします。
目次
ここがおかしい!ボジョレーヌーボーのコピー
かえって値打ちを下げている
ボジョレーヌーボーのコピーがおかしいのは、素人目にも誇張のし過ぎと分かることです。過去20年余りでは次のようなコピーが目につきます。
「◯◯年に1度」とか「□□年で最高」という表現が繰り返されていますよね。このリピートは、返って値打ちを下げてしまうことになっているのではないでしょうか?
無理がありすぎる……
2005年には、「ここ数年で最高」というコピーが出ています。2009年は「過去最高と言われた05年に匹敵する50年に一度の出来」というコピーになっています。
そして、2014年は、「2009年の50年に一度のできを超える味わい」と表現されました。「過去の△△年を超える〜」という表現もパターン化されたものです。これも使い過ぎると色あせてしまいます。
「◯◯年に1度」と「過去の△△年を超える〜」を合わせた表現が、2011年の「100年に1度の出来とされた03年を超す21世紀最高の出来栄え」というコピーになっていますね。
こんな感じで、よくわからないですが、苦しい誇張表現になっていることは確かですね。
こちらの動画でも「コピペ問題」に言及していますので、併せてご覧ください。
なぜこんなに誇張したコピーに偏るのか?
委員会と業者の癒着?
こちらの記事でも言及してますが、毎年「当たり年」のような表現になるのがボジョレーヌーボーのキャッチコピーです。
このようなコピーは、専ら大手輸入業者や居酒屋の店長、ソムリエのコメントだったりします。彼らはボジョレーワイン委員会やフランスの食品振興会の評価を参考にしたり、生産者に直接でき具合を尋ねたりしてコピーを練るようです。
ここからは憶測で言うことになりますが、おそらく販売業者側は、コピー表現について、ボジョレーワイン委員会や生産者達と話し合って決めていることでしょう。
誇張というより「煽り」
ボジョレーヌーボーがどう評価されるかは、販売者だけでなく生産者側の死活問題にもなってきます。というのは、ボジョレーヌーボーは試飲用のワインなので、このワインの出来不出来は、その年に生産されるワイン用ブドウの出来不出来に直結します。
また、ボジョレーヌーボーは新鮮さが売りのワインですから、長時間寝かせると味が落ちてしまいます。解禁日直後からすぐに売りさばく必要があるのです。
生産者、販売業者とも、解禁日直後からボジョレーヌーボーの購買意欲を最高に高める必要があるという事情が、誇張コピーの氾濫につながっているのではないでしょうか?
2012年のコピーだけなぜ低評価だった?
委員会の見解の矛盾
ボジョレーヌーボーのキャッチコピーは高評価連発ですが、唯一例外だった年があります。それは、2012年のこと。この時のコピーは……
でした。
雹や冷夏などの気候条件が厳しく、ブドウ収穫量が過去50年で最小だったようです。ただブドウの品質は、ボジョレーワイン委員会の評価によると「よく熟すことができて健全」ということでした。
「史上最悪」の本当の意図
それにしても、ボジョレーヌーボーが「史上最悪」というのはどういうことでしょうか? それまで連発していた最高評価のコピーを一転して、ネガティブさで同情を買おうとしたのでしょうか?
そんなことを考えた人はちょっと待ってください。少し勘違いしているようです。コピーは「ボジョレーヌーボーが史上最悪」とは言っていません。「ボジョレー地区のブドウの収穫が史上最悪」と言っているのです。
そして、この年のコピーがもう1つあることを知っていましたか? それは……
というものです。
「史上最悪」と驚かせておいて、「品質はバッチリですよ」と言うことで、最高評価の強度を高めようとしているのです。この年だけ、キャッチコピーの戦術を変えているのですね。
ボジョレーのコピペ問題 まとめ
いかがでしたでしょうか? 絶賛し過ぎが問題となるボジョレーのコピペ問題ですが、そこには販売業者や生産者の事情が伺えることがご理解いただけたのではないでしょうか?
実は、ボジョレーヌーボーのコピーは、実際誰が考えているのかが不明なのです。ボジョレーワイン委員会ではありません。この委員会は独自に評価文を公表していて、それはおよそ宣伝文句になりにくい表現になっています。
もしかすると、案外、素人がキャッチコピーを考えているのかも知れませんね。なぜなら、余りにも過去の表現をコピーしているような言い回しが多いからです。
言葉にうるさいフランス人ですから、奮起して、もっと気の利いた表現を考えてもらいたいものです。